Higgsfield AIのカメラモーション「SNORRICAM」を試す|最新AIで実験 Vol.24

AI CREATIVE BASEが探求する最新の生成AIツールや機能を試す実験シリーズ。完成作品だけでなく、試行錯誤の過程も包み隠さず公開します。クリエイターの視点でAIツールの可能性を探り、その実用性と表現の幅を検証していきます。
今回は、AIプラットフォーム「Higgsfield AI」に搭載された「SNORRICAM」に挑戦しました。カメラを被写体の胸元や身体に固定し、その歩みや動作にあわせて映像が揺れ動くことで、主観的かつ身体的な没入感を生み出すカメラ技法です。この動きは視聴者に緊張・混乱・内面の揺れを強く伝えることができ、特に心理描写やスリリングな演出に効果を発揮します。
使用素材
今回使用したのは、AIインフルエンサー「おむすびちゃん」の夜の都市を背景にした静謐なポートレート画像。夜の街角に佇む彼女の表情は、どこか思い悩むような、あるいは何かを探し求めるような複雑さを湛えています。
衣装は鮮やかなブルーのニットセーターを着用し、襟元がわずかに傾いているのは心の不安定さや余裕のなさを暗示するようです。このような都市の喧騒の中に一人静かに存在する彼女の姿は、SNORRICAMによる内面描写に最適なビジュアルとなっています。

出力結果
初回の生成では、都市の背景が動き、おむすびちゃんの顔は中央に固定されているなど、構図面ではSNORRICAM的視点がある程度再現されていました。青と赤のネオンが彩る都市の雰囲気もあり、映像的な雰囲気は一定水準に達していました。
しかし、歩行中の体の揺れや不自然でした。また、表情における「混乱」や「思い出そうとする焦燥感」が十分に表現されず、内面的な演出が弱い印象となりました。背景のスピードや光の演出に比べ、被写体が”静かすぎる”ために映像が平板に感じられる場面もありました。
こうした課題を受け、被写体の内面を「動作」で明確に伝える(髪をかきあげる、視線を動かすなど)、体の揺れや呼吸の細かな表現を促す文言を追加するなどの調整を行いました。
完成作品
再度生成した結果、カメラは彼女の胸元にしっかりと固定され、歩くたびに揺れる視点が身体感覚としてリアルに再現されています。視線は落ち着きなく揺れ、片手を髪にかける仕草が印象的です。「何かを思い出そうとしている」内面の焦燥が、言葉なく伝わる瞬間となりました。背景のネオンや人の流れは滑らかで、被写体の静けさをより一層際立たせています。
SNORRICAMによる映像表現は、「ただ映す」ではなく、身体と内面を一体で”見せる”ことができる技法だと改めて実感しました。今回の生成でも、髪をかきあげる動き、揺れる呼吸、視線の曖昧さといった微細な演技がしっかりと映像に現れており、AIによる人物表現の成熟度の高さを実感できました。
この技術は、短編映画の冒頭カット、都市モノローグ型のMVや広告、内面描写に特化したアート映像など、幅広く活用が期待できるでしょう。
今後も、Higgsfield AIのポテンシャルを探っていきます。
引き続き、お楽しみください。