Higgsfield AIの「INCLINE」エフェクトを試す|最新AIで実験 Vol.38

AI CREATIVE BASEが探求する最新の生成AIツールや機能を試す実験シリーズ。完成作品だけでなく、試行錯誤の過程も包み隠さず公開します。クリエイターの視点でAIツールの可能性を探り、その実用性と表現の幅を検証していきます。
今回は、AIプラットフォーム「Higgsfield AI」の新エフェクト「INCLINE」に挑戦しました。
「INCLINE」は、被写体が立つ空間全体がゆっくりと傾くことで、現実の重力が崩れていくような違和感を生み出すエフェクトです。背景の壁や床、構造物が静かに斜めにずれていくことで、静止している被写体との対比が際立ち、空間に詩的な緊張感が生まれます。日常的なシーンに非現実的な揺らぎを加えることで、映像に独特の没入感と不安定さを与えることができます。
使用素材
今回使用したのは、AIインフルエンサー「おむすびちゃん」のポートレート画像です。舞台は夜の地下駐車場。チャコールグレーのジャケットをまとい、静かにカメラを見つめています。照明は蛍光灯の冷たい光。背景には白と黄色のラインが走る駐車スペース、並ぶ車、コンクリート柱。何も起こっていない“平衡な現実”を描き出しています。

出力結果
生成された動画では、空間全体が傾き始めます。天井の梁や壁、駐車スペースの白線などの直線的な要素が徐々に角度を変え、まるで見えない力が空間全体に作用しているような違和感が生まれます。特に印象的なのは、背景に停まっていた自動車が、重力の変化に引かれるように車体がじりじりと滑り出すことで、空間全体にリアリティのある緊張感が加わり、単なる視覚効果ではない「空間の崩れ」が明確に表現されています。
「INCLINE」エフェクトは、明らかに異常なことが起きているにもかかわらず、被写体はまったく動じず、通常通りに存在し続けているという点にあります。この現実と非現実のギャップが、映像に静かな緊張感と深みを与えます。今回の地下駐車場というロケーションは、壁や柱、床のラインといった直線的な構造物が多く、傾きの変化が視覚的に非常にわかりやすく表現されました。
この技術は、建築空間や都市風景などの実在感ある背景に“視覚的ズレ”を加える演出として、ミュージックビデオ、コンセプトムービー、ファッション映像の世界観演出に活用できるだけでなく、空間の重力や均衡が崩れる感覚を通して、メディアアート展示における時間・意識の揺らぎの表現としても、活用が期待できるでしょう。
今後も、Higgsfield AIのポテンシャルを探っていきます。
引き続き、お楽しみください。