フィジカルAIという新しい波
AIというと、チャットや画像生成など「画面の中の存在」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし今、AIは少しずつ「物理世界」へと広がり始めています。
センサーやカメラを通して現実を理解し、ロボットやデバイスが実際に動く——こうした領域は「フィジカルAI」と呼ばれ、海外ではすでに大きな潮流になりつつあります。
この流れは、時間差を伴いながらも確実に日本にも広がってくるはずです。私たちはその未来を待つのではなく、小さくても実践的な一歩を踏み出すことにしました。
最初の挑戦は「スタックチャン」
今回スタートしたのは、スタックチャンの社内開発プロジェクトです。
スタックチャンは、M5Stack製の小型マイコン「M5Stack」をベースにした、GitHubで公開されているオープンソースのロボットプロジェクト。
3Dプリントされたボディに小型ディスプレイを顔として搭載し、手のひらサイズながら「表情」や「動き」を持つ、愛嬌のある存在です。
オープンソースであることは重要なポイントです。
設計やコードが公開されているため、単なる組み立てにとどまらず、独自の機能拡張やAI連携を前提とした発展が可能になります。つまり、フィジカルAIの実験場として非常に適したプラットフォームなのです。
最初のゴール:カメラで認識し、反応する
今回の第一目標は、シンプルかつ本質的です。
「カメラで何かを認識し、それに応じて反応する」こと。
例えば、
・人の顔を認識して表情を変える
・特定の色や物体を見つけて声を出す
・手を振る動きを検知して応答する
こうした動作は一見シンプルですが、
「見る(認識)」→「理解する(推論)」→「動く(出力)」という、フィジカルAIの基本構造をすべて含んでいます。
この体験は、画面内AIとはまったく異なる実感を伴います。
目の前の存在が自分を認識し、反応する。その瞬間、AIは「ツール」から「インタラクションの相手」へと変わります。
なぜ、いま社内プロジェクトなのか
今回の取り組みは、単なる技術検証ではありません。
フィジカルAIを自分たちの手で理解し、設計思想から試行錯誤までを体験することに意味があります。
また、開発の過程——設計、実装、失敗、改善——をプロジェクトとして継続的に配信していきます。
完成品だけでなく「つくるプロセス」そのものを共有することで、
フィジカルAIがどのように現実世界に組み込まれていくのかを、具体的な形で示していきたいと考えています。
小さな一歩から、実装の未来へ
スタックチャンは、決して大規模なロボットではありません。
しかし、小さなデバイスだからこそ、AIとハードウェアの接続点を解像度高く学ぶことができます。
フィジカルAIの時代は、いきなり巨大な自律ロボットから始まるわけではありません。
こうした「小さな実装」の積み重ねが、やがて産業や日常のインターフェースを変えていきます。
今回の取り組みは、その第一歩です。
画面の中のAIから、空間の中のAIへ。
私たちは、実装から未来を描いていきます。